木下さん、ブルースリーファンだったそうですね。僕もそうでした。 先日、30年ぶりに「死亡遊戯」を見て、あらためてリーの偉大さに感心しました。 特に死亡遊戯は、代役の俳優による吹き替えシーンが多く混じっているため、 本物のリーの放つ圧倒的なオーラがより鮮烈な印象を与えます。 実はそれで子供の頃は気づかなかった、リーの人気の秘密を発見しました。 リーの映画は、まったくもって日本の時代劇の見せ方ではないですか。 アクションシーンのリーは、相手方と対戦するのではなく、実はカメラ(観客)と対戦しています。殴った(蹴った)とき、筋肉や姿勢が最も美しく見えるようにしているのですが、これはいわゆる旗本退屈男や桃太郎侍の立ち回り方(殺陣)と同じではないですか。 うーむ。ゆえにあれだけ日本で大ブームになったのですね。納得です。 少林寺の達人の木下さんならよくご存知でしょうけど、通常、打撃系格闘技では、当てた瞬間に最も力を集中させます。しかし、リーは攻撃に入る直前に筋肉を硬直させ、当てた瞬間には力を抜き、直後の決めのポーズでまた硬直させ(プルプルするほど)ています。やってみて下さい。ほらブルースリーみたいでしょ?でもこれでは実戦では負けてしまいますね。 が、実際には本当に強い格闘家である魔裟斗や畑山の演じる映画の格闘シーンは、全然つまんないものです。おそらくは長年の訓練で培った本物の戦い方が体に染み付いてしまっているのでしょう。やはりリーは生粋の映画スターです。リーが相手をしているのは、カメラであり、観客なのです。 いまだにあのオーラには誰も近づけません。ショーコスギがいまいちなのは、鍛え過ぎて本当に強いからなのかも知れません。ジャッキーチェンも日本的殺陣式アクションでかなり人気を得ましたが、残念ながらリーのオーラには遠く及びませんね。 当時、僕はリーのポスターを集め、サウンドトラックはすべて買い、もちろん映画はあのつまんないグリーンホーネット(電光石火)までも見に行き、のべつヌンチャクを振り回す少年でした。また長じては、カンフー着にカンフーシューズを普段着にしたりしていました。が、木下さんのように本当に少林寺拳法とかは習いませんでした。やっぱり本当に強くなったらだめです。リーはオタク族のカリスマなんですよ。 (なんか興奮し過ぎて、話が長くなってしまいました。すみません…)
いしたさんもブルース・リーオタクでしたか。やはり私も中高時代、部屋の中は壁も天井もリーのポスターで埋まり、日夜ヌンチャクの修練に励んでいました。ブルース・リーが対戦しているのはカメラであるという分析はなるほどなるほど。確かに彼は以下に自分をかっこよく見せるか、に細心の注意を払っていたように思います。’73~’75年当時カンフーブームに乗っておびただしいカンフー映画が作られましたが、全てブルース・リーとは次元の違う映画でした。その意味でブルース・リーは格闘家と言うよりは希代の映画スターだと思います。 ちなみに私が一番好きなのは日本公開第1作目の「燃えよドラゴン」です。この映画は台詞が全てはいっている2枚組アルバムがあって、私は友達からそれを借りてきてダビングし、毎夜聞いていました。英会話の練習にはなりませんでしたが、いまだに台詞を覚えています。あと今では禁止されているようですが、当時は映画館にカメラをもっていき、写真を撮っていました。 「燃えよドラゴン」公開当時ブルース・リーはすでにこの世を去っていましたが(享年32才)、年老いたブルース・リーを見たくはないような気もします。未完だった「死亡遊戯」を含めて映画が5作しかないというのも良かったのかも知れませんね。